2001.4

夢を形に、進化し続けるミュージシャン〈なおと〉

by=上野さくら

〈その若者〉の歌声に、〈夢〉を見た。
青春の情熱と野心、優しさとやるせなさなどを余すことなく描く彼の世界に、若き日の自分自身が重なり、忘れていた〈何か〉が身体の奥底から熱く吹き出してくる・・・、そんな思いがした。

〈なおと〉、21歳。
等身大の青春を独自の音楽世界に描き、ソウルでファンクテイストなサウンドで観客を魅了する、ソロ・アーティストだ。3年前、柏のストリートから突如として生まれた彼は今、21世紀の日本の音楽シーンに大きく羽ばたこうとしている。

2001年4月25日、渋谷の〈ON AIR WEST〉で、アマチュアとしては初の「500人ワンマンライブ」を開催予定。彼は、その熱い情熱の渦で渋谷の街を埋め尽くそうと、大いなる野望を抱いているのだ。

「都会の雑踏」という波が、〈なおと〉の歌を進化させる

1979年、三重県生まれの野田育ち。
柏レイソルのジュニアユースに所属していた彼は、週3回の練習の合間を縫って、中2から曲作りを始めた。大学進学の春、初めて柏でストリートライブを決行。当時はまだ、座ったまま恥ずかしげに演奏する若者が多い中、〈なおと〉はひたすら立ったまま、ときには歩き回りながら、観客と絡み合い、歌っていたという。

「柏は、野田住いのオレにとって、まさに『街』だった。サッカーの練習にも通ったし、塾も柏だったので、よく遊んだな。新宿で1,2回ライブしたことがあったんだけれど、なんか柏がやっぱり落ち着くんだよね〜、自分の街って感じがしてさ。」

その柏で彼は、これまでの人生の中で最も不可思議な1日を迎えたのである。
「忘れもしないよ。初ストリートの日、怪しいおっちゃんたち数人が寄ってきて、いきなり声をかけてきたんだ、『一緒にまちを作ろう!』って。『・・・な、なんじゃ、そりゃ?!』みたいな・・・(笑)、変な感覚だったなぁ。」

「怪しいおっちゃん」とは、当時、もっと面白いまちを作ろうと市民で結成した、初期のストリートブレイカーズメンバーたちのこと。その秋、柏駅ダブルデッキに特設ステージを作り、初めてストリートミュージシャンコンテストを開催。全国的にも話題を呼んだ、イベント集団である。

〈なおと〉はその「怪しいおっちゃん」たちの毒牙にはまり(?!)、結局週1回の会議に顔を出し、企画にも頭をつっこんで、ストブレのテーマソングも作るなど、柏のまちづくりに参加。中央大学(多摩)に入学したはずなのに、なぜか柏通いが続く日々を送る。
「〈サムエル〉を柏まつりに呼ぼうと、彼らのところまでお願いしに行ったり・・・。実は、オレの初ステージも柏祭りなんです。」

その〈サムエル〉と〈なおと〉は当時、同じストリート仲間。
「その年の4月から半年くらい、週1で金曜日にライブやってたな〜。まだ売れてない〈サムエル〉とよく日にち、かぶってた。オレ、ステモ東武前、〈サムエル〉はエレベーターの丸くなってるところで、互いに演奏していたんですよ。」

この不可思議な出会いがきっかけとなり、以来、〈なおと〉は柏のストリートを代表するミュージシャンとして成長。地元の若者はもちろん、怪しいおっちゃんやおばちゃんたちの声援を受け、大きく羽ばたいていくことになる。

〈柏〉がオレの音楽を変えたとかいうのじゃないけれど、いつも安心感があったね、〈柏〉に応援してもらっているっていう・・・。イベントのゲストに呼んでくれるのも、うれしかった!まだデビューさえしていないのに、認められているっていうのかな、そんな喜びが明日へのパワーにつながり、今日までやってこれたように思う。」

98年、〈なおと〉はバンド「FREEMAN」を結成。その年自主製作したCDは1100枚を越える売り上げを記録する。
バンド解散後、99年秋にはニューヨークのアポロシアターで大暴れ。ソロ活動1年目の昨年は、サポートバンドと共にライブを重ね全国を歩き、11月には〈四谷フォーバレー〉にて初のワンマンライブを決行。200人の観客を動員して、大成功を収めている。

ロングトールサリー(柏)で、ミニライブ(2001.3.31)


〈なおと〉の歌には、若者たちの飾らない〈等身大の日常〉があふれている。
しかし、それは単なる状況の羅列ではない。止めどなく流れる歌詞の行間から、彼の魂の奥底から沸き立つ〈何か〉が溢れ、聞く人の心を釘付けにする。それは同世代の若者だけにではなく、私たち大人の心をも・・・。

前代未聞の〈500人ワンマンライブ〉まで、あとわずかだ。

「ライブが一番、オレらしさを表現できるステージだと思う。ライブというひとつの空間の中で、オレのパワー、ノリ、抱えきれないほどのメッセージを発することにより、会場を埋め尽くす500人がそれぞれ何かを受け止め、反応し、連鎖して、新しい何かを生み出すことができたら・・・。」
そう話す彼の瞳に、一瞬、研ぎ澄まされた一筋の光が走るのを感じた。

大いなる野望と限りない可能性を胸に、進化し続ける〈なおと〉
夢を形にしながら明日に向かって歌う彼の横顔に、幸運の女神は、きっとキスすることだろう。
がんばれ、〈なおと〉!!

【なおとのHP】 http://www.tcn-catv.ne.jp/~t-nakamura/
(iモード用のHP)http://www.tcn-catv.ne.jp/~t-nakamura/i