2007.11

<柏木じゅん子 の「柏つうしん」>

<アートラインかしわ2007>
二大巨匠の大作が一堂に会す「芹沢_介・棟方志功 釈迦十大弟子展」

(記)柏木じゅん子

「アート」を通じて常磐線沿線のイメージアップと活性化を実現しようと、昨年夏に上野〜取手間の自治体により結成された 「JOBANアートライン協議会」。昨年は、上記の協議会設立を受けて、柏でも「JOBANアートラインプロジェクト柏実行委員会」が 発足し、秋には一大アートイベント「ART LINE Kashiwa 2006」が開催され大きな反響を呼んだ。

そして、今年も 「アートラインかしわ2007」がスタートし、柏の「芸術の秋」は盛り上がりを見せている。11月には多彩なアートイベントが 企画されているが、まず、11/1(木)〜11/30(金)まで開催されている「芹沢_介・棟方志功 釈迦十大弟子展」(こうじやギャラリー)を 訪ねることにした。

こうじやギャラリー(金子ビル)

 今回の展示は、柏市の「砂川コレクション」の公開事業の一環で、「アートラインかしわ2007」の開催期間に合わせて企画された。 「砂川コレクション」とは、市内在住の故砂川七郎氏が生涯をかけて収集した芹沢_介作品(約630点)・棟方志功作品(約50点)のことであり、 昭和56年に砂川邸内に開館した私設美術工芸館に展示されていた。
 その後、市の文化振興に役立てて欲しいという砂川氏の遺志により、1995(平成7)年に市に寄贈され、1996(平成8)年に同工芸館が 「柏市立砂川美術工芸館」としてリニューアルオープンした。それ以降、10年以上の間多くの人々に親しまれてきたが、建物の一部にアスベスト含  有物が使用されていることが判明し、安全を考慮して今年の6月で惜しまれつつも閉館される運びとなった。
砂川コレクションは2008(平成20)年夏に沼南庁舎内で公開が予定されているが、今回のように芹沢_介・棟方志功という二大巨匠の大作を 一度に観られる展示会は大変に貴重である。

芹沢_介作品

 芹沢_介(1895〜1984)は、静岡の呉服商の次男として生まれ、少年時代から画家を志す。東京高等工業高校(現・東京工業大学)図案科を 卒業後、漆器・木工・染色の図案家として活動。1927(昭和2)年に民芸運動の提唱者である柳宗悦(※)の論文『工藝の道』に感銘を受け、柳と 親交を結ぶようになる。そしてその翌年、沖縄の「紅型(びんがた)」に出会ったことが後に「型絵染」を生み出す契機となった。伝統的な「型染」 は型紙と防染糊を用いて布や紙に模様を染め抜く技法だが、芹沢の「型絵染」は、通常分業で行われる図案の作成・型彫り・糊置き・色挿し・染め など全ての工程を一人で行うところに特徴がある。芹沢は1956(昭和31)年に、この「型絵染」で重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受け、 88歳で亡くなるまで多数の作品を残し、その作品群は国内外から高い評価を得ている。

 今回展示されている芹沢作「釈迦十大弟子尊像」は、釈迦尊涅槃の地インドのクシナガラに建立された釈迦本堂内陣に収めるために制作された 作品であり、芹沢が亡くなる一年前、87歳の時に完成した。和紙と漆で描かれた十大弟子の姿は静かな佇まいの中にも力強さを感じさせる。

棟方志功作品

棟方志功(1903〜1975)は、青森の鍛冶職人の三男として生まれる。少年時代にゴッホの絵画に出会い感動し、「わだばゴッホになる」と 画家を目指して上京。1936(昭和11)年には国画会展に出展した作品が柳宗悦に見出され、柳と共に民芸運動に従事していた河井寛次郎・濱田庄司 らとも交流を深めながら、多くの傑作を生み出す。当初は油絵が中心だったが、のちに版画に惹かれるようになり、版画を「板画」と呼んで独自 の作風を築き上げた。
 「二菩薩釈迦十大弟子」は1939(昭和14)年、棟方が36歳の時の作品。1945(昭和20)年の空襲を受けて自宅と共に多くの版木を焼失したため、 普賢菩薩と文殊菩薩の柵は1948(昭和23)年に再制作された。その後、「二菩薩釈迦十大弟子」を含む作品を出展したサンパウロ・ビエンナーレ (1955年)では版画部門最高賞を、翌年のベニス・ビエンナーレ(1956年)では国際版画大賞を受賞し、「世界のムナカタ」と称されるようになる。
 棟方の描いた「二菩薩釈迦十大弟子」は、あるいは天を仰ぎ見たり、あるいは身をよじるなど、今にも動き出しそうに生き生きと描かれており、 どこか人間味のある表情をしている。芹沢・棟方の両作品は、釈迦十大弟子という同じテーマを扱っていながらも対照的な作品となっているのが 興味深い。

 ちなみに、民芸運動の「民芸」とは、「民衆」・「工芸」を結びつけた柳宗悦の造語。日常生活で使われる道具に美を見出すという「用の美」を 追求する民芸運動は、柳宗悦・河井寛次郎・濱田庄司を中心に展開され、芹沢_介・棟方志功に大きな影響を与えた。

「釈迦十大弟子展」

 今回の展示を企画した柏市役所文化課の担当者のかたに伺ったところ、11/15(木)の時点で、約540人がギャラリーを訪れているとのこと。 リピーターも多いらしい。
 ギャラリー中央の青い椅子に座ると、美術の本などで目にする「曼荼羅」が思い浮かぶ。「曼荼羅」とは、諸仏や菩薩を画面に配置して宇宙と 真理を象徴的に表した仏教美術だが、芹沢_介・棟方志功の描いた釈迦の弟子達に囲まれた空間に居ると、2人の仏教宇宙の中に入り込んだような 気がした。


※ 柳宗悦(1889〜1961)は、『白樺』の創刊に携わった白樺派の一人としても知られている。1914(大正3)年に叔父の嘉納治五郎(=講道館の創始者) を頼って我孫子の手賀沼近くに移住した柳は、白樺派の友人である志賀直哉と武者小路実篤、親交のあったバーナード・リーチを呼び寄せ、我孫子 は白樺派の拠点となった。