2000.9 

気持ちいいゾ! 柏の日曜日

==By上野さくら==

ストリートライブのメッカ、柏。真夏の1か月間は演奏する若者の姿も見られず、ダブルデッキは閑散としていた。けれど、9月に入ると、さすがは柏。さっそくミュージシャンたちが舞い戻り、今日もまた、何組ものグループが思い思いの場所で自慢の曲を披露している。

先週の日曜日、まだ暑い日差しの中、東口デッキには久しぶりに大きな人垣ができていた。8月2日にデビューしたという“小澤倫(さとし)”のライブだ。小柄でか細いライン、あまーいハスキーボイス、女性の心をくすぐる切ないバラード。しっとりとした情感あふれる歌声に思わず足を止め、聞き入ってしまった。

例によって、観客は高校生や大学生、買い物途中のおばさまや親子連れ、なんだかわかんないけど立ち寄ったという感じのおじいちゃん、おばあちゃんまで、その年齢層は幅広い。小澤クンはそんなギャラリーの表情を伺いながら、さりげないトークで観客を引きつける。ストリートにありがちな、ぎこちなさなど微塵も感じさせない、安定感のあるステージ。「こんなに実力あるミュージシャンのライブを“ただ”で聞けるなんて、超ラッキー!」 残暑の太陽が照りつけるなか、汗を拭き拭き、小澤クンの甘い歌声にしばし酔いしれたのだった。

ふと気がつくと、彼らバンドの左側に白衣を着た一見マッチョな男性たちと黄色いのぼり旗、そして、なにやら怪しい椅子が3つ。旗には「無料!整体体験」などという、ヒジョーに魅力的な言葉が書かれている。どうやら、彼らは西口にある整体所の整体師さんらしい。

でもでも、しかし・・・。屋外で、しかもたくさんのギャラリーがいるライブのすぐ横で、いくら無料と言われても、さすがにマッサージを受ける勇気はない。何人かの恥を知らない中年おばさんたちは気持ちよさそうにその身をゆだねているが、なんだかとっても違和感のある光景。うらやましい気持ちを抑えつつ、「いくら何でも、そこまでおばさんではなーい」と念じて、ひたすら小澤クンの歌声に耳を傾ける、私。

それでも・・・。やっぱりちょこっと気になるので、手の空いている整体師さんに「どうしてここで、こんなことしてるんですか」と、声をかけてみた。すると、「いやぁ、私たち、小澤クンと友だちなんです。それで、不定期だけど、彼らがライブするときは、いつも一緒にやってるんですよ」と、嘘か本当か分からぬような答えが。

「ほんまかいな」と思いつつ、「気持ちいいですよ〜。試しにどうですか」という、まさに天の声のような一言に、先ほどの恥じらいなど、どこ吹く風。自分でも驚くほど堂々とマッサージ椅子に座り、マッチョな整体師さんに身をゆだねてしまったのだ。う〜ん、何という快感!「無料」の喜びに浸る、“恥を知らない中年おばさん”とは、この私だ。青空の下、小澤クンのバラードを聴きながら、グワッシ、グワッシと身体をもみほぐされ、まさに心も身体もリフレッシュ。こんなお得なことって、あってもいいのかな〜。なんだか、すっごく得した気分の1日だった。

ところで、話は変わるが、今年の秋もまた、明日のメジャーを夢見るストリートミュージシャンを集め、その歌唱力とパフォーマンスを競う、《ストリートブレイク2000かしわ》が開かれる。

3回目となる今年のコンテストには、全国から87組の応募があり、事前審査を通過した40組が9月23、24日両日、高島屋3Fエントランス広場で行われるオーデションに挑む。本戦は、10月15日。この日は、西口、東口両広場にステージを設けられ、《柏まつり》さながら、若者の汗と情熱が飛びかうビックイベントが繰り広げられるということだ。どんなユニークなミュージシャンが登場するのかな、今からとっても楽しみだ。

ストリートライブを楽しみたい人も、グワッシ、グワッシを体験したい人も、柏の秋を訪ねてみてね!若い人はもちろん、おじさん、おばさん、おばあちゃんも、いつもの自分じゃ味わえない、新鮮な感動に出合えると思うよ、きっと!