2001.8

甘い誘いに、ご用心!

by=上野さくら


  「悪質なキャッチセールスが行われております。ご注意下さい。」
 JRと東武線を結ぶ連絡通路に張り出されているこの<お知らせ>、最近妙に気に なっている。一見、何事もなく平和な風景のこの場所で、いったいどんなトラブルが 発生しているというのだろうか。

 1日の乗降客数32万人。多くの通行者でにぎわう柏駅周辺では、連日、広告用の ティッシュやチラシをせっせと配る人たちの姿が見うけられる。
 時には、美しげなコンパニオン嬢がたばこや化粧品など、試供品を配っているこ ともあり、思わぬお土産をいただいた日には、なぜか心がホクホクとすることも・・・・。
一方、若い女性には追いかけてでも渡すのに、明らかにオバサンと思われる者の前で はサッと手を引き、知らんぷりを決め込む配布員もいる。

先日も出勤途中、赤いミニスカートの愛らしい女性がちょっとおしゃれなボトル入り のシャンプーを配っていたが、案の定、私のことは無視!
こんな時、ティッシュやチラシはもういいが、その試供品だけはいただきたかったなぁと、いつまでもいじましく思うのは私だけだろうか・・・・・。

そんなこんなで日々ごった返す駅前で、突然人波をかき分け飛び出しては、若い女性にピッタリくっつき、さかんにアタックしている若者がいる。 はは〜ん、彼らが問題の人物なのかしらん?!

彼らは、一見、今流行のホスト風スタイル。ソフトスーツに身を包みメッシュの入ったその髪をかき上げながら、お目当ての女性を見つけてはスッと近寄り、 何やら親しげに話しかけている。

いったい、何をささやいているのか、どんなふうに誘っているのか、本当に悪質なセールスなのだろうか・・・・。そう思って、そのお兄さん方の前をこれ見よがしに 通ってみる。が、悲しいかな、年齢制限(?!)で声すらかけてもらえず、真実を究明することはできない。

ある友人の話では数年前、柏駅で若い女の子がキャッチにつかまり、甘い言葉に誘われてどこかのビルの1室に連れ込まれた上、高額の宝石を買えと迫られ、 無理矢理ローン契約させられたことがあったのだという。

そういえば、私も若かりし頃、ふとした心のスキから渋谷でステキ(?!)なお兄さんにつかまったことがあった。当時もやはり、手口は一緒。 ビルの1室に誘導され、50万もする英語教材を買えと迫られたのだった。

その会場には実に多くのカモられた若者がいて、次々とパーテーションで仕切られた小さなスペースへ押し込まれては、説得というか脅しというか、とにかく 強引に教材購入を勧められるのだった。私は当時、お金を持っていなかったことと相当ふてぶてしかったことが幸いしてか、何とか契約の判を押さないまま 解放された。それでも、監禁(?!)時間はゆうに2時間。おおかたの若いカモは根負けして、先方の勧めるまま、訳のわからぬローン契約にサインしていたようだった。

一方、おばさんだから大丈夫、と安心してばかりはいられない。やはりこれも聞いた話だが、柏駅周辺では時折、おばさんたちを専門に勧誘するグループが出没し、 クジやら試供品引換券やらを配っては、これまたどこかのビルへ誘導し、集団催眠よろしく、高額な商品を売りつけたりするという。

基本的に、知らない人がニコニコ近づいてきたら、絶対あやしい!見ず知らずの人が声をかけ、なんの下心もなくこちらがうれしくなるような品物をくれるなんてこと は、まずあり得ない!

誰もが百も承知なはずなのに、どういう訳か甘い誘いに乗り、フラフラとついていってしまう人が後を絶たない・・・・。いったい、なぜなんだろう? 高額な商品や不必要な品物を買わせられることはもちろんだが、知らない人にすごまれ、怖い思いをするのも、何だか情けない。一見、何事もなく安全に見える このまちにも、常に私たちの心のスキをねらっている者がいるのである。

とにもかくにも、<甘い誘いには罠がある>。どんなときにも、このことだけは忘れずにいたいものだ。

ところで、余談だが、もらい損なったシャンプーの一件。帰り道、再び例のシャンプーガールの前を通りかかると、スススッと目の前を横切るオバサンがひとり。 彼女の前に仁王立ちになり、「ねぇ、何配ってんの? 私にもひとつ、くれない?」と、半ば強引にお目当てのシャンプーをゲットした強者がいた。

恐るべし、オバサンパワー!!注意すべき人物は、他にもいるのかも知れない・・・・。