2002.6.20 


<庭野すみれの なんでもウオッチング>
「ナンジャモンジャ」って なんじゃいな?
     木立のなかの廣池学園を訪ねて

(記)庭野すみれ


 

 田舎そだちのせいか、名も知らぬ草花から巨木まで、およそ植物と名のつくものはすべ て好きである。知人の案内で、南柏にある廣池学園(麗澤大学・麗澤中学・高等学校)の キャンパスを初めて訪ねたのは、3年前の連休の頃だった。以来、すっかりとりこになっ てしまった一本の木がある。

深い木立のなかのキャンパス  

 その名も「ナンジャモンジャ」。これは、関東地方特有の呼び方で、その地域では見ら れない種類の大木をさして呼ぶらしい。廣池学園のナンジャモンジャは「ヒトツバタゴ」 というモクセイ科の植物だと、説明書きにある。

 キャンパス入口で訪問の許可をいただき、中に入ると間もなく一面に真っ白い雪をかぶ ったような、こんもり繁った大きな木が目に飛びこんでくる。そばに近づいて見ると、細 長い可憐な花びらが無数についている。その美しさ珍しさに、首が疲れるほど見入ってし まったものである。

ナンジャモンジャ(ヒトツバタゴ)の木  

 広いキャンパス内には、ナンジャモンジャのほかに「楷(かい)の樹」という日本に数 本しかない貴重な木もある。中国の学者・孔子の墓のそばに生えていた木の種子を贈られ たもので、昭和11年の学園創設から間もない頃にここに植えられたという。植物学者・ 牧野富太郎博士によって「孔子の木」と名づけられたこの木は、秋になると燃えるような 色に染まり、これまた見事である。

 これらのほかにキャンパス内には、珍しいハンカチの木、ハナミズキ、マロニエ、バラ 、ツツジ、自然のままに枝を伸ばした桜などが生い茂り、四季それぞれに素晴らしい自然 の舞台を演

「廣池千九郎記念館」入口  

出してくれる。外の喧騒とはまるで別世界のような恵まれたこの環境に、思わ ず公園と勘違いして入ってくる人も多いという。

 この緑深いキャンパスの一角に、学園創立者のあゆみを紹介する「廣池千九郎記念館」 がある。入口のフロアに腕をあげた大きな銅像が建っていて、「わしの腕は細いけれども ストロングアーム(強い腕)だ。なにも恐れるものはない、この腕にすがってきなさい」 という意味の言葉が書いてある。


深い木立のなかのキャンパス

 1866年、大分県中津市でうまれた廣池千九郎は、人類の平和と幸福を実現するため には、民族や宗教を超えた道徳の確立がなにより大事と考え、科学の分野も含めて中国の 古典や、古今東西のあらゆる思想家や哲学者の研究に邁進し、道徳科学(モラロジー)の 教えを拓いた不屈の人である。

 館内でまず目を引くのは、身につけていたという質素な衣類や、病身に欠かせなかった カイロなどの品々、そしてなにより国内外にむけての的確な提言や、「たとえ貧しくても 心は豊かに」と願った訓示の数々である。わが身をいとわず人

幼稚園前の美しいバラ園  

の世に捧げ尽くしたその一 生にふれ、なんの予備知識も持たずに訪れた私は、深く胸を打たれた。

 この学園では、「単なる知識だけでなく、人間性を高める教育こそ真の教育である」と いう創立者の理念のもとに、幼稚園から大学(麗澤)までの教育がおこなわれている。園 内を訪れた人たちに交じって、芝生の上では高校生らが円陣を組んで討論を楽しんでいた 。なんと微笑ましく心地いい風景だったろう。

  

 この素晴らしい園内を散策させてもらうには、入口警備室に申し出て記帳することにな っている。一般にも開放されてはいるものの、あくまでも教育の場である。マナーを忘れ ず楽しみたいもの。来年もまた元気で、あの美しいナンジャモンジャに会いに行きたい。