2004.11
「文化祭」という看板を横目で見ながら、これまでのぞいてみたことはなかった。 「なかなかなものよ」という知人の誘いで会場に足を踏み入れてみて驚いた。老若 男女いろんな人が、いろんな芸に挑んで、その成果をいきいきと発表しているのだ。 その平和な光景とパワーに感動すら覚えた一日だった。 柏の文化祭は、昭和25年(1950)に始まり、市制施行50周年の今年は、人と 人の和を広げ、さらに躍進し、未来に夢をつなぐという意味で、「和・夢・未来」と いう テーマが掲げられている。昭和34年に文化連盟が発足し、市制30周年には姉妹都 市トーランス市との芸術交流もおこなっている。 | |
アミュゼ柏クリスタルホールの会場 | |
この市民芸術の祭典では、川柳、俳句、短歌、茶道、香道、いけばな、盆栽、書道、
写真、マジック、洋楽、邦楽、民謡、舞踊、話し方教室、将棋など、あらゆる分野の
発表が、各公民館や市民ギャラリー、アミュゼ・柏クリスタルホールなどで、2ヶ月
あまりにわたって繰りひろげられる。 アミュゼ柏クリスタルホールでの邦楽部門では、江戸芸かっぽれ、 能楽、長唄、筝曲、日本舞踊と、次々に発表され、観客の喝采をあびた。筝曲の柏玲 会は、柏が富士のように発展することを願って、「富士」を力強く演奏した。 |
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筝曲・柏玲会のみなさん | |
長唄部門の友栄会・柏秀会は、申年にちなんで、猿三題を披露。舞台背景にはメン
バーでもある画家・長縄えい子さんによる三番叟が描かれ、華やかさを添えた。長縄
さんは岡安喜和栄先生のもとで習い始めて3年、「長唄って歌詞が粋でしょう」と、
いかにも楽しそうにその魅力を語ってくれた。 駅前通り商店街の老舗薬局・一二三堂の一人娘として育った杵屋秀金喜さんは、昔か らの慣わし通り、6歳の6月6日から習い事を始めたという幸せな人。芸を積み重ね たその声は、なんとも艶やかであった。三味線を担当した長谷川晴美さんは、演出家 ・蜷川幸夫のもとで演劇の修行を積んだこともあり、三味線歴は20年になるとい う。 | |
長唄・友栄会・柏秀会のみなさん |
日本舞踊のなかでひときわ目を引いたのが、西川流扇嗣奈会の渡辺美月ちゃんの「手
習子」。
長い曲を手習子そのままの可愛らしさで、見事に踊り切って万雷の拍手を浴びた。
楽屋に訪ねてみると、まだあどけない小学校6年生の少女だった。 踊りは5歳の時から、西川扇嗣奈先生の門下でお稽古をしているという美月ちゃ ん。「小さいときから踊りが好きで、盆踊りの輪から、なかなか出てこない子 でした」と、お母さん。わが子の素養を見抜いた母親と娘の、幸せな姿がそこに あった。 |
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日本舞踊・西川流扇嗣奈会の渡辺美月ちゃん |
文化祭という発表の場が、さらに芸を磨く上での励みになっているのだろう。やる気さ
えあれば、いろんなことを楽しむことができる、ありがたい世の中だ。しかし、今年の日本列
島はどうしたことか、息つくまもないほど多くの災害に見舞われた。台風や中越地
震の被災者に思いを馳せながら、耳、目の保養をさせてもらった。
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長唄・織音会のみなさん |